季節はもう秋。お月様が美しい時期になってきました。
秋のお月さまといえば、「十五夜」。
十五夜とは、1年のうちで最も美しいとされている「中秋の名月」を鑑賞しながら、収穫などに感謝をする日です。「中秋」とは、その名のとおり、「秋の真ん中」の意味。
かつて使われていた旧暦では、秋は7月から9月で、8月の15日ごろが中秋の名月と位置付けられていました。
新暦は旧暦と1〜2か月のずれがあり、「9月7日から10月8日の間で満月の出る日」が十五夜ということになります。
■「十五夜」の由来
毎月満月の日は来ますが、秋の満月の日が、「十五夜」として特別な日になったのはなぜなのでしょう。
秋になると、農作物の収穫が始まりますね。大忙しのこの時期、収穫が夜になることもあります。電気がなかった時代では、月明かりが収穫の頼りでした。農家の人々は、月の明かりにどれだけ感謝したことでしょう。
また、秋は、様々な農作物の収穫の時期です。特に米の収穫量は、その年の生活を大きく左右するものでした。そこで、月に、農作物の豊作祈願と収穫への感謝をしたようです。
こうしたことに加え、古来から日本人は月を眺め、愛でる習慣がありました。和歌などに、月、特に秋の月がよく詠まれていることからもうかがい知ることができます。
秋の月は、空気が乾燥していて、空気中の水蒸気量が少ないので、空気が澄み、月明かりがはっきりと夜空に映ります。1年の中で最も美しい月ともいわれています。
この美しい月を眺めながら、亡くなった自分の祖先に思いを馳せてもいたようです。
これらが相まって、感謝と祈りをささげる「十五夜」という風習に繋がったといわれています。
少し余談なのですが、十五夜といっても、必ずしも満月というわけではないのです。肉眼では、まん丸お月様に見えますよね。
■童謡「うさぎ」
十五夜には、童謡のうさぎを歌いながら、お団子を食べて月を眺めたりした幼少期の思い出がおありの方も多いと思います。
「うさぎうさぎ、何見て跳ねる、十五夜お月様、見て跳ねる」と口についてすぐ出てくるのではないでしょうか。
この童謡は、江戸時代より歌い継がれているわらべ歌(子どもたちが、遊びの中で歌い、作り変えられ伝えられる歌)ですが、満月を見ると、月の表面の影が、まるでウサギが餅つきをしているように見えるために、『月にはうさぎが住んでいる』と言い伝えられてきました。
日本では、餅をついているウサギに見えますが、ヨーロッパではカニ、またアメリカでは、女の人の横顔に見えるといいます。国によってこんなに違うのは面白いですね。
このように見えている月の表面の影は、実は、溶岩(ようがん)の固まりです。大昔、月の火山が爆発(ばくはつ)して、黒い溶岩が流れ出しました。低く平らな所に広がって固まり、様々な形に見えているというわけです。
この月のうさぎには、ある伝説があります。インドのジャータカ神話の仏教説話から来ている伝説のようですが、ご紹介いたします。
昔々あるところに、きつね、うさぎ、猿の3匹が住んでいました。
3匹は「自分達が獣なのは、前世で何か悪いことをしからではないか。それなら人の役に立つことをしてみよう」と話し合っていました。
話を聞いた帝釈天(仏教の守護神の一つ)は、3匹に機会を与えてあげようと、自らお腹を空かせた老人に変身し、3匹の前に現れます。
その老人に出会い、3匹はそれぞれ考えました。
さるは木に登って木の実を集め、きつねは魚を獲って戻ってきましたが、うさぎは何も持ってくることができませんでした。
何もあげることができないと思ったうさぎは、老人に向かって「私を食べて下さい」と言い、自ら火の中に入って死んでしまったのです。
老人から元の姿に戻った帝釈天は、そんなうさぎを見て「その姿を月に残して後世まで語り継がれるようにしてあげよう」と、うさぎの亡骸を月に送ったと言われています。
このもの悲しさが、月の美しさと調和し、本当に後世まで語り継がれるようになったに違いありません。
■十五夜のお供えものの意味を知っておこう
十五夜のお供えものいえば、お月見団子とススキ。
お月見団子は、お月さまと同じく丸い団子をお供えし、それを食べることで健康と幸せが得られると考えられています。
お月見団子はピラミッド型に積み上げされてお供えしますが、最上部を天に向けることで、収穫の感謝、祈願の気持ちを月まで届かせようという意味があります。
ススキは、茎の内部が空洞になっていることから、古くから「神様の依り代」と考えられてきました。そのため、悪霊や災いなどから収穫物を守り、翌年の豊作を願う意味がこめられています。
十五夜の日は花瓶などに入れて窓辺に飾りますが、地域によっては十五夜が終わってもススキは捨てず、庭や水田に立てたり軒先に吊るしたりして田畑や家を守る風習が、今でも残っています。
お月見団子やススキに加え、旬の野菜や果物である里いもやさつまいも、ぶどうなどを
お供えする地域もあるようです。
かつては、貴族の間で月見は楽しまれていましたが、江戸時代からは、庶民の間でも広がり始めました。
月神である月読命(つくよみのみこと)は農耕の神さまといわれていましたので、農作物の収穫に感謝し、秋に収穫したものをお月さまにお供えするようになりました。
■「十五夜」以外にもあるお月見の時期〜「十三夜」「十日夜」
「十五夜」以外にも、お月見の時期があること、知っていますか?
それは、「十三夜」と「十日夜」(とおかんや)です。
十三夜とは、旧暦9月13日のお月見のことで、十五夜のあとにめぐってくる日。
「十日夜」は、旧暦10月10日に行われた収穫祭のことをさします。
十五夜と並んで満月のお月見が楽しめる「十三夜」「十日夜」も合わせて、秋の夜長を楽しみましょう。