【食材のこだわり】うなぎについて【しげよし】

2018/08/15

夏バテ防止のお食事として何を思い浮かべますか。
「うなぎ」が浮かんだ方も多いのではないでしょうか。毎年7月の「土用の丑の日」は、夏バテ防止のためにもうなぎを食べる日として定着していますね。
では、うなぎには、どのような夏バテ効果があるのでしょうか。

また、「土用の丑の日」は、どんな意味なのかご存知ですか。笑い話で、土用を土曜日だと思っていたという方もいらっしゃるとお聞きします。

知っているようで知らない「うなぎの効果」と「土用の丑の日」、その関係性を探ってみたいと思います。

■うなぎの効果

夏バテが起こる原因は、主に3つだといわれています。
暑いと、私達は汗をかきますよね。汗をかくこと自体は、体温を下げるために必要な行為なのですが、この時、汗と一緒に大量の水分とミネラルが体外に排出され、その補充が追い付かず、夏バテが引き起こされます。また、ビタミンB1が不足しがちになり、血中に乳酸が増えることも原因となります。

暑さで消化機能が低下し、栄養が不足してしまうことも夏バテの原因です。
一歩外にでると厳しい暑さと、冷房で冷やされた室内の温度差に身体が対応できず、自律神経が乱れてしまうことも、夏バテを引き起こします。

 

では、うなぎの成分がどのように夏バテに効果があるのでしょうか。
汗をかくことで不足しがちになるのは、ビタミンB1でした。これが、うなぎには豊富に含まれています。
ビタミンB1だけなく、脂質やタンパク質の代謝を助け、エネルギーに変えるビタミンB2やB6、食欲不振に効果的で体力を増強するビタミンB12も含まれています。
ビタミンは、まだまだありますよ。
ビタミンAにいたっては、うなぎ1匹で成人が1日に必要とする量を補えるほど含まれています。
免疫力を高め、細菌やウイルスを撃退してくれるビタミンEもたっぷり含まれています。

さらに、骨粗鬆症に力を発揮するカルシウムやカルシウムの吸収を助けるビタミンD、生活習慣病を予防するEPAやDHAという成分も含まれています。
うなぎは、まさに、ビタミンの宝庫、栄養満点というわけです。

もう一つの夏バテの原因、食欲不振は、暑さで胃の消化機能が低下してしまうからでしたね。
その弱っている胃や腸の粘膜を保護してくれる効果が、なんと、うなぎの皮のぬるぬるした部分にある、ムコプロテインというたんぱく質成分にありました。

 

夏にうなぎを食べることは、栄養学的にも理にかなっていることがわかりましたよね。

うなぎが夏バテを意識して食されていたのは、今に始まったことではなく、かなり古くからだったようです。
7~8世紀頃に編纂された万葉集には、大伴家持がこのような歌をのせています。
「石麻呂に 吾物申す 夏痩せに 良しといふ物ぞ 鰻漁り食せ」
(俺は石麻呂にこう言ったよ「夏痩せにはうなぎが良いと言われてるから取ってきて食たべなさいよ」)
「痩す痩すも 生けらばあらむを はたやはた 鰻を漁ると 川に流るな」
(夏バテでげっそり痩せていても生きられるのだから、万が一にでもウナギなんかとりにいって、川に流されるなよ)太りたい一心でうなぎを取ろうと思い、川に入るのはいいけれど、水に流されては元も子もないよと冷やかしているわけです。
この二つの歌から、うなぎを食べると太って健康になるという知識が当時からあった事が解りますね。

■土用の丑の日

冒頭で、土用が土曜日だと思っている方もいるようだとお話ししましたが、土用は、旧暦で使われていたので、馴染みがないのも頷けます。
土用とは、「立夏(5月5日頃)」「立秋(8月7日頃)」「立冬(11月7日頃)」「立春(2月4日頃)」の季節が変わる直前の18日間を表します。
「丑」とは十二支の一つで、「年」を数えることが多いのですが、実は「日」も数えます。カレンダーの日付の左端に干支が書かれているものをご覧になったこともあるかもしれません。
つまり、土用の期間にある丑の日が「土用の丑の日」というわけです。
ただし、土用が18日間、丑を含めた十二支が12種類と数が異なりますので、丑の日が2回ある月も出てきます。その場合は1回目を「一の丑」、2回目を「二の丑」と呼んだりします。

 

丑の日は、災難を受けやすい日と言われていました。そして、その災難を避けるための、丑の方角の守護神が「玄武」という黒い神様だったため、「黒い物を食べる」という風習があり、ウナギやどじょう、黒鯉・黒鯛、ナスなど黒い物が、丑の日に食べられるようになったという説があります。
この黒い神様としての「うなぎ」の話以外にも、まさに現代に通じている話がありますので、ご紹介しましょう。

さかのぼること江戸時代です。今日は養殖技術が向上し、年中美味しい養殖うなぎが出回っていますが、当時は、天然うなぎですから、旬は秋から冬でした。ですから、春から夏にかけては、うなぎが売れませんでした。困ったうなぎ屋は、平賀源内(蘭学者として有名な人物)に相談しました。
当時、丑の日にちなんで、“う”から始まる食べ物を食べると夏負けしないという風習があったそうです。これにヒントを得て、平賀源内は「“本日丑の日”という張り紙を店に貼る」という案を出し、これが功を奏し、うなぎ屋は大繁盛したというのです。他のうなぎ屋もこぞって真似をし、張り紙をするようになりました。そうして定着したのが「土用の丑の日にうなぎを食べる」習慣ともいわれています。今も、デパートの地下やスーパーのうなぎコーナーで、“本日丑の日”という張り紙がでますよね。
200年以上も前に始まった習慣が今も続いていることには驚きます。しかし、ご紹介したうなぎの多くのメリットを考えると、長い間この習慣が定着してきたのも納得できます。

猛暑が続いておりますが、うなぎで夏バテを吹き飛ばして、元気にお過ごしください。