しげよしのブログをご覧になったお客様から、「引き出物のお椀が漆塗りなのですが、もったいなくてなかなか使えません。お手入れの方法を教えていただけますか?」というご質問を頂戴いたしました。ありがとうございます。今回は、漆器とそのお手入れ方法につきましてご紹介いたします。
■漆器は日本の伝統工芸品です
木や紙などに漆を塗り重ねて作る工芸品全般を「漆器」といいます。食器はもちろん、根付や小箱など、たくさんの漆器がございます。最近では和歌山県の紀州漆器、福井県の越前漆器、福島県の会津漆器、石川県の山中漆器を指して「日本四大漆器」などというようです。石川県の輪島塗、神奈川県の鎌倉彫なども漆を使います。私どもしげよしの本店がございます三重県では、伊勢春慶という雅な漆器が有名です。
蒔絵などの美しい装飾が施された日本の漆工芸品は欧米の工芸作家にも影響を与え、漆や漆器を指して「Japan」と呼称します。
■漆には天然の防腐効果があります
そもそも、なぜ器に漆を塗るようになったのでしょうか。漆は、ウルシ科のウルシノキなどから採取した樹液を加工した天然樹脂塗料です。古くから日本には「漆桶にいれた水は腐らずいつまでも飲める」「漆を塗った花器に生けた花は長持ちする」などの言い伝えがありましたが、故・眞島利行教授や金沢工業大学などの研究により、漆に含まれる「ウルシオール」という物質に抗菌作用があることが実証されています。また、防腐効果や防虫効果、耐水性もある素晴らしい天然の塗料が漆です。漆のツヤもウルシオールが醸し出すものですが、日本の漆はウルシオールの含有量が高いため、他国の漆塗りよりも美しく仕上がるとのことです。
■電子レンジでは絶対に使用してはいけません
かくも美しく、しかも天然の抗菌作用があるなど素晴らしい漆器ですが、100℃を超える熱や直射日光、乾燥などが苦手な、デリケートな器でもあります。直火使用や電子レンジ、オーブンなどで使用されますと火災の危険がありますので、避けてください。また、冷蔵庫に入れるなどしますと木地を狂わせ、変色することもあります。 お総菜を盛り付け、余ったらそのままラップして冷蔵庫へ……という使い方はできません。
■お手入れは中性洗剤とぬるま湯でさっと洗って布巾で乾燥を
漆器のお手入れはとても簡単です。柔らかいスポンジに中性洗剤をつけてやさしく泡立て、泡とぬるま湯でさっと洗うだけです。湯につけ置き洗いをすると塗装がはがれてしまう場合がございますので、さっと洗うようにしてください。また、クレンザーや食器洗浄機、食器乾燥機のご利用も避けてください。洗った後は布巾で余分な水分を拭うだけです。拭くほどにつややかになるのも漆器の魅力です。
■しまうときは漆器を一番上に
しまうときに陶磁器と重ねてしまいますと、焼物の底で漆器を傷つけてしまうことがございます。重ねるときは漆器を一番上にしてください。漆塗りのお箸に食器洗浄機は使えませんが、普通のお箸と同じように洗っていただければ大丈夫です。
■漆器はしまいこまず、毎日使うのがおすすめです
漆器は特別な日だけに使うもの、と考える方が多いようですが、ぜひ、毎日使ってみてください。お味噌汁やおすましを入れる汁椀などは電子レンジや冷蔵庫で使うこともありませんし、日常生活に取り入れやすいでしょう。使うほどにツヤが増し、美しく輝いてまいります。新調した漆器のにおいが気になるときは、2~3日程度室内に出しておけばにおいが抜けます。茶筒の場合は、使う前に古いお茶の葉を入れて10日ほど置いておけば大丈夫です。
■おせちのお重は9月頃に一度確認を
年に1回、お正月のときだけに使うおせちのお重は、いざ年末に出してみますとカビが生えていたり、塗装が割れていたりする場合がございます。漆は塗り直しもできますので、9月頃に一度虫干しをして傷がないか確認し、もし何か不具合がありましたら購入店に相談されることをおすすめします。また、しばらく使っていない漆器は乾燥している場合がございますので、ぬるま湯にしばらく浸けて水を含ませ、柔らかい布で水滴を拭きとってからからお使いになるとよいでしょう。
かけがえのないひとときに、ご期待以上の品質をご提供させていただくために、これからもしげよしは日本古来の文化を追求して参ります。お引き立てのほど、どうぞよろしくお願いいたします。