【器のこだわり】仕出し弁当に割れる器を使う理由【しげよし】

2017/05/16

■「食器は料理のきもの」と申します

優れた芸術家であり、陶芸家であった北大路魯山人先生は、「食器は料理のきもの」という名著を残していらっしゃいます。
単に食べるというだけであれば、太古のように木の葉の上に載せてもいいはず。
しかし、料理をより高みに持っていくためには、器にこそ料理人はこだわらなければならないと。
私どもしげよしも、先生と志を同じくするものでございます。

(このエッセイは青空文庫で無料にてお読みいただけますので、こちらからどうぞご参照ください。)

2017sp-211 祝会席御膳

■コストよりもおもてなしの心を選びます

企業利益という観点からすれば、捨てられるプラスティックの容器を使う方がコスト的にはいいはずです。
しかし、私どもはしげよしの仕出し弁当に、家族に孝行する以上のまごころと、おもてなしの心を込めたいと思っております。
「かけがえないひとときに、ご期待以上の品質を」ご提供させていただくという、
しげよしの信念を貫くならば、器にも、より一層のこだわりを持つべきとの結論にいたりました。

2017sp-202 松華堂御膳
■器選びの条件とは?

特に和食において、器は料理を引き立てる重要な存在です。
春は桜の柄、夏は涼しげな白蒼など、季節と料理にあった器を選ぶことで料理と器は一体となり、料理をより一層美味しく召し上がっていただくことができると考えております。
私どもは、献立を考える際に必ず、器はどのような柄がいいだろう? どこのものがいいだろう? と常に、器もワンセットで考えるようにしております。
また、和食は器を手に取って食べるもの。
その形、絵柄、手触り、唇に当たるときの食感も大切です。和食器は両手で扱っていただくものですから、女性でも男性でも「持ちやすくすべりにくい」器であることが必要です。
さらに、仕出し弁当は私どもの店からお客様の元まで運ぶものですから、壊れにくいものであることも条件です。

2017sp-213 春の会席膳
■和食器には陶器、磁器、漆器があります

和食器は大変歴史の古いものですから、種類も形も様々です。まず「焼き物」と呼ばれる和食器は、「陶器」と「磁器」に分かれます。
この2つの一番大きな違いは、原材料です。陶器は粘土を主体とする素地でつくられるため、「土もの」と呼ばれます。
これに対して磁器は、岩山を砕いた石の粉からつくられるため、「石もの」と呼ばれます。
陶器は吸湿性が高く、土の素朴な風合いや、器をつくる陶芸家の手作業のぬくもりが感じられます。
磁器はつるりとしていて吸湿性がなく、見た目もとても華やかです。どちらがいい、というのではなく、料理に応じて使い分けるのが料理人だと考えております。
私どもが「野点御膳」や椀物などに使っておりますのは「漆器」です。
漆器は、ウルシ科の木から採取した樹液(漆)を、ケヤキやミズメ桜、栃の木、センノキなどの木地に塗り重ねて作る器です。
漆塗りは美しさに加え、壊れにくく、古くは武士の鎧や兜にも使われていました。
漆や漆器は海外で「ジャパン」とも呼ばれ、多くの漆器収集家がいるほどです。

2017sp-210 野点御膳
■お客様からのうれしいお言葉

私どものお客様からいただいた感想に、こんなうれしいお言葉がありました。
「娘が海外の方と結婚し、帰国したときに身内でお祝いを、と思いまして、しげよしの仕出し弁当“祝い会席御膳”を頼みました。
お相手はお料理の彩りもさることながら、竹篭や鯛が載った漆塗りの膳、桜の形の磁器など、器と中身、そして季節との調和に大変感動していました。
帰国前に、デパートで和食器を山ほど買い込んだので、手荷物の重量制限を超えてしまったそうです(笑)」。
ありがとうございます。器と料理の調和に日々頭を悩ませながら献立を考えている料理長が、大変ありがたいお言葉だと心打たれておりました。
次回は、私どもが使わせていただいております有田焼につきまして、詳しくお話をさせていただきます。